嫁に髪を切ってもらってちょっとドキドキした話。
嫁に髪を切ってもらった。
もちろん、嫁は美容師でもなんでも無い。
コトの始まりは、二日前。
嫁「髪伸びてきたねー。」
私「そうねー。」
嫁「髪、切ってあげようか?」
私「・・・。」
私「明日、美容室行こうかなー」
嫁「そっか。家の近くの美容室?近くに行きつけができるといいよね。」
そして、今日。
私はパンツ一丁で風呂場にリビングの椅子を持ってきて座っている。
鏡に映る自分の身体がいつも以上に頼りなく見える。
嫁「じゃあ切るねー。」
嫁ははさみを持ってきて切り始めた。
シャキン、シャキン!とても勢いよくはさみが鳴る。
嫁「あ、ごめん!耳切りそうだった。」
私「・・・あー大丈夫よ。」
そのとき私はあることを思い出した。
先月、新宿のVRゾーンに嫁と私の友達とで遊びに行った時のことだ。
一番最初にやったアトラクションは、空飛ぶ自転車のやつだった。
途中障害となる岩や壁を避けながら、目的地に到着しなければならない。
私は小心者なので、慎重になり岩や壁を避けながら進んでいたが、結局目的地にはたどりつけなかった。
嫁は目的地にゴールできたらしい。
嫁「岩にぶつかっても気にせず進んでたら、ゴールできちゃった(笑)」
記憶から戻ってきて、お風呂場の今の状況をもう一度観る。
私「・・・。」
嫁は真剣な表情をして私の少しクセのある髪の毛と格闘していた。
空気がピーンと張りつめる。
緊張の中に私は、なんだか分らない感情を感じていた。
嫁「はい!終わりー」
嫁「ワックスでごまかして。」
私「うん、ありがとう。」
私が美容室には行かずに、嫁に髪を切ってもらうことにした背景はこうだ。
美容室に行けば国家資格をとったプロの美容師さんが今、流行の髪型に仕上げてくれる。
それは、確かにお金を払うだけの価値を提供してくれているように思う。
でも、どの美容室に行っても似たようなサービスに似たような会話が繰り広げられる。
そこにはある程度の予測できる範囲のことしか起こらない。
私はプロの美容師ではなく、嫁に髪を切ってもらった。
そこは、これからどうなるのか?予測ができないドキドキがある。
切る側と切られる側に緊張関係がある。
そしてそこからコミュニケーションが始まり、新しい感情と出会う。
今までとは少し違った嫁の姿、自分自身の姿が観える。
そこにはどんなに腕のいい美容室にいっても経験できない価値があるように思うのだ。
予測のできない未来を私は選択してみた、といったらかっこつけすぎだろうか。
みなさんもぜひ一度経験してみてほしい。
新しい、何かが生まれるかもしれません。
そのために耳の一つや二つ、犠牲になるかもしれませんが。
切った髪の毛をシャワーで洗い流して、ドライヤーで乾かして鏡を見た。
違和感の無い整った髪型のスッキリとした表情の私がそこにはいた。